娘は歩いて三分の公立小学校に元気いっぱい通った。近所の友だちと暗くなるまで遊び惚け、心配していたいじめにあう気配もなく、学校生活をエンジョイしていた。ところが親の私は「有名私立校」への夢が捨てきれず、「こんどは遅れをとるまい、失敗するまい」と、彼女を早々と小学校三年の途中から受験塾に入れた。神経質なくせにどこか一本抜けている性格は赤ん坊のころから少しも変わらず、娘は受験がわかっているんだかわかってないんだか、別にいやがりもしないが、まなじりを決して勉強して、今度こそ合格するぞという意気込みもないまま二年半塾に通った。私はといえば、最初の一年は宿題を見てやったり、模擬試験で間違えた問題のなおしをやらせたりしていたものの、仕事が多忙をきわめたために、またもや放ったらかしのまま、ただ試験の成績だけにぶつぶつ言う最低な親をやっていた。「口は出すが、手は出さない」という、塾の先生からもっとも非難を浴びるタイプの親である。最後の一年の、それも志望校を決める秋の個人面談あたりからは、ようやく塾にも顔を出すようになったが、それまではほとんど塾に行ったこともない。すべて塾まかせ、子どもまかせで、「受験生の親としての審査」なんてあったとしたら偏差値は三〇を切っていたはずだ。ただ、学校選びだけは真剣にやった。娘が五年生のときから、延べにして二十佼をくだらない学校を見学に行き、学校説明会に参加した。これぞと思った学校にはふだんの日にも行って、生徒の下校風景をチェックすることまでした。「私立中学」というものに興味があったせいもある。小学校受験のときに真剣に学校選びをしなかった後悔もあるし、何よりも自分自身と娘に「なぜ中学受験をするのか」を納得させる材料が必要だった。
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