万が一に備えて安全在庫を持つべきだと言う反かんばん派

2011.11.22

トヨタ生産方式では「安全在庫」を認めていない。当時、バッファー(緩衝部分)は、せいぜい二十二時間程度のものだった。ところが、堤工場は三時まで動いていた。それだけ、堤工場はヘソクリの在庫を持っていたということである。そのとき、「元町は在庫を持っていないから生産が早く止まってしまった」と声を大に叫んだわか者がいた。もちろん、このトンネル事故が起こる前から「万一に備え安全在庫を持つべきだ」という反かんばん派の意見はあった。

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それをまた、「そのとおりだ」とうなずく者がいる。もっとも、トヨタでは生産ラインが止まってから三〜五時間後に元に修復している。東名高速を避けて中央高速等に迂回したトラックに積んだ部品が次々に到着したからである。そして、それが着き次第、ただちにラインを再稼働できたトヨタの機敏な動きは、それこそ大量生産型のシステムではなく、「ジャストインタイム」の多品種少量生産の小回りが利く生産システムだったからだと言える。しかし、そのころは「東海大地震」の話が大きな話題となっていた時期である。日本坂トンネルの事故で勢いづいた反かんばん派は「地震が起きてもトヨタが生産を落とさずにいくには在庫を持っていなくてはダメだ」という議論をする。対して、「大地震が起きて、世の中が大変な騒ぎになっているときに、トヨタだけが自動車を悠々とつくって金儲けをしているという話になったらどうなるのか。そんなときこそ、トヨタは持っているトラックを全部出して救援に駆けつけるのが日本人としての責任ではないか」というのがかんばん部隊の反論であった。地震のことでは、それと同じ議論が、一九九五年の阪神大震災のときにも持ち上がった。「地震で、トヨタなどの生産が一時遅れたのは在庫を持たないかんばん方式のせい」だというのである。このときはすでにトヨタでは、本来のトヨタ生産方式とはシステムが違っており、それなりの安全在庫を手持ちしていたと見られる。しかし、在庫は持てば持つほど、何かが欠落していることが多い。したがって、在庫のなかには、必要なものが意外に欠けていて、結局、阪神大震災でもそうだったが、突発事故などのときは部品不足でラインは止まるのである。