仮住まいの間、借りていた駐車場が建築現場の横にあったため、車に乗り降りするたびに自然と工事現場が目に飛び込んできます。7月29日、その日も外出先から帰って、いつものように駐車場に車を止め、私は現場を眺めていました。翌日に生コンクリートを入れるばかりに建ち上がった1階部分は、枠板や足場のパイプに囲まれて、すでにしっかりとした存在感があります。敷地は駐車場から数段高くなっているので本の板が階段状に置かれ、立入禁止のプレートもかけられ、現場は整然としています。と、そのときです。私は工事途中の建物を見て、ある大事なことに気がついたのです。「あっ、裏出入口に庇がついていない……」私としたことが迂闊でした。建築中の家の躯体は綿密に構造計算され、それに基づいて緻密に組み立てられています。部長からも、あとから穴など開けて欲しくないといわれていました。でも、庇がないと雨の日などは不便です。「どうしよう……」庇の出っ張りをつくるには、断熱材を突き破って鉄筋を外に出し、そこにコンクリートを流せるように枠板と鉄筋を新たに組み立てなくてはなりません。しかも、明日の朝から生コンクリートが入ってしまいます。「もう間に合わないかもしれない」またもや、いてもたってもいられなくなった私は、日曜日であるにもかかわらず、24時間携帯電話を開けておきますといってくれた部長に電話をすることにしました。電話番号を押し、呼び出し音が鳴っている間、私はずっと「すみません。休みの口に電話を入れて申し訳ありません」と、心のなかでつぶやきました。電話の向こうで部長の声が聞こえました。「お休みのところ申し訳ありません。裏出入口の庇が……」慌てふためく私とは対照的に、部長の声は落ちつきはらっていました。というのも、庇はちゃんと後からつけるようになっていたのです。再び「ごめんなさい」と私。本当に現場に携わった方々にはご迷惑をおかけしたと思います。よい家をつくりたいという思いが、現場に足を運ぶたびにいろいろなことに目をとめさせ、心配しなくてもよいことまで心配し、動揺し、どんなにみなさんをわずらわせたことか……。多いときは朝、昼、夕と、1日に何回も現場に顔を出し、ときには監督さんよりも誰よりも早く現場に行っていました(泊まりがけで仕事をされた左官屋さんには負けましたが)。しかし、そのおかげで私は内外断熱工法のすべてを知ることができました。だからこそ、今私は胸を張って、内外断熱工法のすばらしさ、そして私の家の躯体に100パーセント満足しているのです。そして翌日、この日は予定より1日早く、新潟から2階部分の断熱ボードが届きました。トラックを運転してきたのは、あの若い女性ドライバーです。そして、職人さんたちが大勢集まり、その力を結集していよいよ生コンクリートが入ります。